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農業をやめろというのか!?国の理不尽な洪水対策【噂の!東京マガジン「噂の現場」】

近年、大雨による被害が増え、ますます重要になっている治水対策。
河川の水を一時的にため込む「遊水地」を造ることも、その一つです。
ところが、埼玉県坂戸市では、多くの作物を栽培している農地を遊水地にする計画が持ち上がり、農家の人たちが怒っています。
懸命に農業を行っているのに、治水対策のため、続けるのが困難になるかもしれない…そんな計画が、なぜ持ち上がっているのでしょうか。

東京・八丁堀のラーメン屋もほれる、埼玉・坂戸の小麦「ハナマンテン」

東京・八丁堀のラーメン店「麺や七彩」。
この店は麺そのものの美味しさにこだわり、作り置きをせず、注文を受けてから打ちます。
材料の小麦で最も多いのが埼玉・坂戸のブランド小麦「ハナマンテン」。
ところが、店主がほれこむこの小麦の産地に、今、危機がせまっています。

坂戸市の農家が猛反対!「作物栽培中の農地」を遊水地にする国の計画とは 

2019年の台風19号による甚大な被害を受け、国は、治水対策として、「入間川流域 緊急治水対策プロジェクト」を策定。
その一つとして、台風時の決壊地点に近い2つの地点、越辺川沿いの坂戸市と都幾川沿いの東松山市に遊水地を計画しました。
しかし坂戸市の場合、遊水地が計画された土地は、東京ドーム21個分もの広大な農地。
しかも現在米や麦を栽培しているいわば「現役の農地」が対象となっているため、農家の人たちは「この地の農業を頓挫させてしまう危険性をはらんだ計画」と反対しているのです。

生産農家の不満 農地が犠牲になるのに補償がない

農家の人たちが遊水地計画に反対する理由の一つが、生産農家に補償がない点。
遊水地の計画地の土地所有者に、国は地価に応じて補償金を支払いますが、農地を借りて栽培している生産農家には共済保険への加入をすすめるだけ。
洪水時に入り込む水や土砂で農作物がダメになっても、その後耕作不能になっても、なんの補償もないといいます。
また遊水地の計画地になると、周辺の堤防より一段低くしたところから水が入ってくるので、今までよりも水に浸かる頻度が高まることも不安だといいます。
そのため反対住民は工業団地の計画があった別の農地を代替地として提案しました。

もう一つの計画地 東松山市の農家は、農地の買い取りを希望するも

もう一つの遊水地の計画地、東松山市の農地では、これまで区画整理や用水路整備に補助金が出ていました。
しかし、遊水地の計画で農地が分断された結果、広さの要件を満たさず補助金の対象外に。
また遊水地の計画地になると農業を続けるのが困難と考え、農地の買い取りを国に求めたものの、応じてもらえなかったといいます。

農家の声に国は、変更しない・買取しない・補償しない

国の担当者は、坂戸市の農家が代替地を提案していることについては、現在の計画地が適地、変更は難しいと回答。
東松山市の農家の買い取ってほしいという声には、掘削などを行った場合はその農地を買い取るが、農業を続けられる状態の場合は、買い取りは行わないと回答。
生産農家の補償は、すでに加入済の人多いこと認識しているが共済保険で…とのことでした。

国の施策に矛盾!?日本の農業の未来のため再考を

坂戸の計画地で作られた小麦を原料で使用している「川越ベーカリー楽楽」やパンライターの池田浩明さんは、小麦農家をもっと大切にするべきだと訴えます。
農林水産省は、小麦、大豆、そばなどを栽培する農家に対し「諸外国との生産条件の格差から生ずる不利を補正する交付金」などで支援を続けています。
ところが今回の遊水地計画では、農水省が支援する小麦農家を国交省が遊水地の計画地にして困らせている…同じ国の施策なのに、矛盾しているのではないでしょうか。

全国の農業従事者数は年々減少しています。
国は、そんな状況の中頑張っている生産農家の現状を知り、遊水地計画について、補償制度や代替地の可能性などを考え、もっと話し合うべきではないでしょうか。

文:BS-TBS「噂の!東京マガジン」取材チーム
放送日:2022年10月2日(日)午後1:00~1:54

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