漁師が釣った高級魚クロマグロをなぜか放流!? 【噂の!東京マガジン「噂の現場」】
日本人が大好きなマグロ。
なかでも天然のクロマグロは最高級品ですが、実は、ある漁師たちは釣ったクロマグロの半分以上を海に放流しているのです。
なぜ、そんなもったいないことをしているのか?
その謎に迫りました。
現場は外房・勝浦沖
今回の現場は外房の千葉県勝浦市。
沖合をクロマグロが回遊する黒潮が流れているので全国有数の漁場になっています。
勝浦沖では組合に所属する数十隻の小型漁船が小規模なはえ縄漁を行っていますが、勝浦漁港から豊洲市場までは車でわずか2時間なので、天然の生のクロマグロを鮮度がいい状態で出荷しています。
そんな好条件が揃っている勝浦ですが、信じがたいことに水揚げされる数の数倍ものクロマグロを海に放流しているのです。
国際的に決められている漁獲枠
放流する理由は、国際的に決められた日本の漁獲枠を超えないためです。
勝浦の漁船にも一隻ごとに年間に獲っていい数量が割り当てられています。
それを超える分は釣り糸を切り放流しているのですが、漁師たちは自分たちの行為に疑問を感じています。
苦渋の放流、マグロが増えて生活苦
漁師たちは年間でおよそ家一軒分の金額を海に捨てているといいます。
おまけにここ数年、海の食物連鎖の頂点にあるクロマグロが増えたため、本来釣ってお金にしたいカジキやカツオなど他の魚が逃げてしまうので水揚げが減り生活が苦しいというのです。
釣っても放流しなければならないクロマグロがたくさんいることは恐怖だとも話します。
放流は資源保護になっていない
放流する時は釣り針がついたまま糸を切りマグロを逃がすのですが、漁師たちはマグロが弱ってしまい死んでしまうことも多いのではと、つまり傷ついたマグロを放流しても資源の保護になっていないというのです。
国内での枠配分を見直すべき
日本国内での漁獲枠は、大型船による沖合での漁なのか小型船による沿岸での漁なのかにより配分されていますが、勝浦の漁師たちは自分たちのような沿岸漁への配分を見直して欲しいと訴えています。
というのも水産庁が配分を決める際の基準にしている漁獲データは20年前のもので、当時はクロマグロが沿岸で獲れる量は少なかったからです。
20年前に比べクロマグロが沿岸でかなり増えたという現在の状況に合わせた見直しを行い、沿岸漁への配分を増やして欲しいと言っています。
水産庁をインタビュー取材
放流は資源保護になっていない、国内枠の配分を見直して欲しいという漁師の訴えに水産庁はどう答えるのか?インタビュー取材を行いました。
担当者は、まず放流について「死んでしまうという客観的なデータがないので枠を超える分については放流していただくしかない」と、また国内枠の配分見直しについては「近年の状況を踏まえ沖合より沿岸の方を優遇し枠を1.7倍にまで増やしている」と話しました。
これに対し勝浦の漁師は、「もともと少なかった枠の1.7倍なので増えたという実感はほとんどない」と言っていました。
専門家からの警鐘と提案
クロマグロや海の生物の資源管理に詳しい東京海洋大学の勝川准教授は、「日本のカウントの仕方は世界的にはあり得ない」と話します。
海外では放流しようがしまいが釣れた時点でカウントしているそうですが、日本では釣れたクロマグロを放流すればゼロとしているので国際問題になりかねないというのです。
そしてなにより大切なのが、国内の配分をどうやって決めるか?という決め方だというのです。
水産庁が専門家などの意見を聞き決めるという現在の決め方では、沖合と沿岸、両方の漁師が納得することはあり得ないというのです。
そこで、ノルウェーのように両方の漁師が直接話し合って決めるというもの一つのやり方だと勝川准教授は話します。
ノルウェー政府は配分が決まるまでは漁に出ることを禁じているので、沖合と沿岸の漁師たちは妥協しあうのです。
日本でも現状に合った仕組みを考える必要があると感じた「噂の現場」でした。
文:BS-TBS「噂の!東京マガジン」取材チーム
放送:2024年4月7日(日)午後1:00~1:54
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