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成年後見制度の闇とは?【噂の!東京マガジン「噂の現場」】

多くの金融機関では預金者が認知症だと分かると意思確認ができない状態と判断し口座を凍結されてしまいます。
たとえ預金者の委任状を持っている家族であっても預金をおろすことはできません。
そんな困った事態に対処するために2000年に始まったのが「成年後見制度」。
認知症や障害などがあり自分で物事を決めることが難しい人を親族や第三者である弁護士などの後見人がサポートする制度です。
現在、後見人の8割以上を弁護士が担っていますが、後見されている人の家族などから「親に会わせてもらえない」「後見人がいい加減な仕事している」などと不満の声が上がっているのです。
一体何が起きているのか?
「噂の現場」で取材しました。

任意後見人と法定後見人

後見人には「任意後見人」と「法定後見人」があります。
判断能力のある本人が将来の後見人を選んでおくのが「任意後見人」、障害や認知症などで判断能力が無い人をサポートするために家庭裁判所へ家族や自治体などが申し立てを行い選任されるのが「法定後見人」。
四親等以内の親族や第三者の弁護士などから選ばれますが、今、弁護士の法定後見人による杜撰な仕事ぶりが問題になっています。

母親に会わせてもらえなかった姉弟

3年前、横浜市で独り暮らしをしていた当時87歳の母親の様子を二日おきに見に行っていた娘さんが体調を崩し入院。
すると市が母親を保護するために老人ホームへ措置入所させたのです。
その翌日、娘さんが入院していた病院に市の職員が訪ねてきました。
そこで、母親に後見人をつけるために家族の意向を聞く「意見書」を記入するよう求められたといいます。
弟さんは遠くで暮らしており、市が勧めることでもあったので娘さんは後見人をつけることに賛成と書いたといいます。
すると、市が裁判所に申し立てを行い、母親に弁護士の後見人がつくことになったのですが、まさかの事態に。
弁護士の後見人は母親の居場所を一切明かさず、面会もさせてくれなかったのです。
その理由を尋ねると「後見業務の都合上応じかねる」という返事が書面で返ってきました。
一向に会うことができないため、娘さんは母親に手紙を書き、それを渡してほしいと頼みましたが、後見人は中身をコピーさせて内容を見たうえで、最後まで手紙を渡してくれなかったというのです。
結局、姉弟が母親と会えたのは亡くなる10日前、すでに昏睡状態の時でした。

さらに、母親が亡くなった後、後見人が母親と面会したのはビデオ通話での2回のみだったと判明。
それでも後見人は年間48万円ほどの報酬を得ていました。
そして後見人が、母親の不動産を勝手に売却していたことも判明。
実はこの制度では後見人が老人ホームの費用の支払いなどのために不動産を売却することが認められているのです。
しかし、姉弟は母親には十分な預金があったので不動産を売る必要はなかったといいます。

姉弟は、なにより辛かったのは「母親が自分達に会いたくないと言っているんじゃないかと思ってしまった」ことだと話します。
しかし、母親の死後、施設から開示された介護記録には、母親が毎日の様に家に帰りたがっていた記録が残されていました。

専門家が指摘する後見制度問題

成年後見制度の相談に乗るなど様々な形で問題と向き合う専門機関を運営している宮内さんは、一番の問題は報酬目的による弁護士による後見制度の悪用だといいます。
宮内さんは「基本報酬が、何をしたかではなく、後見される人に資産がいくらあるかで決まるため、本人のことを考えて仕事をする弁護士は少ない」と指摘します。

実は、東京家庭裁判所が公開している資料によれば、後見人の報酬額は後見されている人の資産で決まることになっているのです。
資産が5000万円以上、以下を境目に後見人には月3~6万円程度支払われます。
さらに不動産を売却すると付加報酬いわばボーナスが支払われるのです。
そのため、必要が無くても付加報酬を得るために売却してしまう後見人がいるといいます。

監督人に悩まされた親族の後見人

現在、割合としては2割弱ですが、親族が後見人に選任されています。
Bさんは、障害を持ついとこの両親が亡くなった際、相続をきっかけにいとこに後見人をつけることになったといいます。
後見人にはBさんの父親が選任されたのですが、この制度では被後見人に1000万円を超える預金があると、後見人を監督する後見監督人がつく仕組みになっているのです。
そこで監督人として弁護士がついたのですが、この監督人に悩まされることになりました。

後見人は監督人を通じて家庭裁判所への報告書の提出が義務付けられていて、Bさんの父親は期限通りに提出してきたのですが、なぜか裁判所から注意があったそうです。
というのも、なんと監督人が家裁に報告書を提出するのを忘れていたというのです。
そこでBさんの父親が裁判所へ調査を依頼すると弁護士の調査官が来たのですが、監督人の大学の後輩で何も言えないと言い出したのです。
結局、監督人は辞任しましたが、裁判所はあろうことか次の監督人に調査に来た後輩を選任しました。

日頃から問題があった監督人の発言をBさんは録音、それを上申書とともに裁判所に提出し、監督人を辞めさせるよう求めました。

それと同じ頃、Bさんの父親が腰を痛めて後見人を辞任することになり、次の後見人に娘のBさんを指名する書類も裁判所に提出したのですが……なんと辞めて欲しかった監督人が後見人に選出されたのです。
Bさんは「裁判所は親族や家族よりも弁護士を信頼していると感じた」と話しています。

後見制度を推し進める自治体

平成28年の成年後見制度利用促進法の施行に従い、自治体は制度を推進しています。
こぞってチラシを作り、別件で役所を訪れた人にも後見制度の利用を勧めているのです。
その背景には、行政としての仕事をやりやすくしたいということがあるとも言われていますが、実はしっかりしていて後見人が必要のない人にもついてしまっているという事実もあります。
例えば88歳の女性Cさんは足を骨折した時、住んでいた区に相談したところ、弁護士を紹介されたそうです。

そして遺言を書かされ40万円の報酬を支払わされたそうですが、弁護士の仕事ぶりに違和感を覚え、後に法務局で調べたところ、いつの間にかその弁護士と後見人の契約が結ばれていたのです。
幸いにも知人の力添えで契約は取り消せましたが、こういったことが起きているのです。

成年後見制度はどうあるべきなのか?

専門家の宮内さんはこう話します。
「本当はこんなに怖い制度ではないんです。もっと強くて優しい制度、問題は誰が後見人になるか?諸外国では家族がなるが、日本では20%弱。なぜなら裁判所が制度を円滑に進めたいから。やはり原点に戻って、家族が後見人なれるようにすることが大切です。」
本人にまだ判断能力があるうちに任意後見制度を利用し、誰にどんな仕事をお願いしたいか文書で裁判所に提出することが、個人ができうる防衛策として挙げられるといいますが、最終的に誰を後見人として選任するのか、また監督人を誰が担うのか、家庭裁判所は本人のことを本当に考えてくれる家族や親族、信頼できる第三者を選任する責任があると宮内さんはいいます。

今回被害を訴えてくれた方々は決して極端な例ではなく、取材をする中で他にも制度に翻弄されて苦しんでいる人たちがたくさんいることもわかりました。
高齢化社会に欠かせず、誰もが利用する可能性がある成年後見制度。
その一方で誰もが問題に巻き込まれる可能性がある実態が浮き彫りになり、そのあり方を考えた噂の現場でした。
番組では今後も取材を続けていきます。

文:BS-TBS「噂の!東京マガジン」取材チーム
放送:2023年5月7日(日)午後1:00~1:54

BS-TBS「噂の!東京マガジン」
毎週日曜ひる1:00~1:54 放送中

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