国がさらなる普及を目指している電動キックボードの利用ルールは道路交通法の改正により7月から緩和されます。
しかし今、それに対し利用者からも歩行者からも事業者からも「危険になるのでは？」という不安の声が上がっているのです。
なぜなのか？取材しました。

コロナ禍もあり広まった電動キックボード

コロナ禍が始まった3年ほど前から混雑を避けられることなどで利用者が増えた電動キックボード。
全国2000か所以上で行われているシェアリングサービスも好評です。
通勤や通学、都市部での短距離移動に年齢性別を問わず広く利用されています。
アメリカでは既に市民の足になっていて、129都市でシェアリングサービスが導入されています。
今やその普及は欧米を中心に57か国にも及んでいます。

電動キックボードのメリット

最大のメリットは環境に優しいということ。
CO2の排出量は自動車の約40分の1と言われています。
都市部では交通渋滞の解消が期待でき、公共交通機関が少ない地方では日常的な交通手段としての活用が見込まれ街の活性化に繋がることも期待されています。
また高齢者の利用も想定されていて安定感のある3輪や4輪タイプも開発されています。

現行ルールと新ルール

メリットを考え普及を目指す国は、昨年4月、道路交通法を改正。
7月の施行から利用が新ルールに変更されます。
現状は原付免許が必要でヘルメットの着用が義務、走行可能なのは車道の左端だけで自転車専用レーンも歩道も走行できません。
それが7月からは16歳以上であれば免許証は不要、ヘルメットも任意になり速度6キロ以下であれば歩道の走行も可能になります。
利用する際のハードルが全体的に下がりますが、最高速度は現行の30キロから20キロに下げられ、さらに歩道を走行する際に速度6キロ以下であることを周りに知らせる最高速度表示灯の装備が義務になりました。

様々な人から不安の声

このルール変更に対して様々な立場の人から不安の声が上がっています。
歩行者からは「免許がいらなくなってヘルメットもしなくなれば事故が増える」「免許無しで車道を走るなんて危険」「人混みの歩道を走るなんて危ない」「6キロでもぶつかったら怪我をする」といった声が聞かれ、ドライバーからは「免許が必要な今でも危険な乗り方をする人がいるのだから免許はあった方がいい」また電動キックボード利用者も「一方通行とかあるので免許が無いと危ない」といった声が聞こえてきます。

事故も増えている

利用者が増えるにつれ事故も増えています。
2年前、大阪では一方通行を逆走しひき逃げするという事件が起きました。
その運転手は、なんと3歳の娘と二人乗りでした。
酒帯び運転などの交通違反は一昨年からの2年間で1600件以上、人身事故も69件発生しています。
去年9月にはヘルメットをしないで運転していた男性が転倒し死亡する事故も起きています。

3年前から始まった実証実験

今、街で見かけるヘルメット無しでの利用。
その多くは3年前から国が事業者を限定し行っている実証実験の利用者です。
その事業者の一つ神奈川県横須賀市で実施している会社は「横須賀の観光スポットは点在しているので電動キックボードは観光振興にも適しています。春から夏にかけて車の渋滞が激しくなりますが、そういった時にもストレスなく移動できることも魅力です。」そう期待を口にしながらも今回の法改正については「多くの方に乗っていただけるのではという楽しみがある反面、非常に危機感も持っています。
やはり事故が増えることを懸念していて、新ルールになる前に免許を持っていない人たちにも交通ルールの周知をしている最中です。」と話し、今後は必ず安全講習を受けなければ利用できないといった新たな規制が必要だと訴えていました。

交通法の専門家も危惧

道路交通法の専門家も問題点を指摘しています。
一つは自転車の通行ルール問題が解決していない中での法改正という点です。
昭和20年代から始まった日本のインフラ整備は主に自動車と歩行者のために進められてきたといいます。
その結果、自転車が走るスペースは無く基本的に通行できない歩道を走ってしまうという問題があるのに、その歩道を電動キックボードが走れるようにするというのは考えられないというのです。
また増加することが予測される電動キックボードによる交通違反を取り締まる余力が警察には無いので違反者が野放しになるのではというのです。
さらに交通ルールが違う国から来た外国人観光客の利用も増えるので危険が増すと話します。
メリットが多い電動キックボード、安全をどう確保していくかが課題だと感じた噂の現場でした。

文：BS-TBS「噂の！東京マガジン」取材チーム
放送：2023年3月5日(日)午後1:00～1:54

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