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なぜ止められない?各地に出現 危険な土砂の山【噂の!東京マガジン「噂の現場」】

各地の住宅街に突如現れ、近隣住民が迷惑と恐怖を感じている土砂の山。
千葉県の野田市や多古町では、高さ20メートル前後の山が撤去されないままになっています。
条例に違反していても、なぜ撤去されないのか。そして、2022年に公布されたという新たな法律は、問題を解決することができるのでしょうか。

醤油の町にいつの間にか高さ17メートルの土砂の山

醤油の産地として有名な千葉県野田市では、2022年、高さ最大約17メートル長さ約168メートルにわたる土砂の山が出現。
目の前の歩道は土砂が崩れる危険性があるため通行止めに。
さらに、裏手にある住宅のすぐ目の前まで土砂が迫っていました。
住民によると、くぼ地と竹やぶだった場所に、ある業者がダンプで1日50台分以上もの土砂をダンプで搬入。
無許可であるにも関わらず、のべ8か月、誰も止められなかったといいます。

条例違反なのになぜ土砂運び込みを止められなかったのか

土砂が積まれた土地の所有者は17の個人と法人。
なかには野田市の市道もありましたが、業者は無許可で搬入を続けました。
現在、土砂は資源と見なされ、搬入などを規制する法律がありません。
そのため野田市でも一定以上の土砂の埋め立ては市の許可制とする条例を設けていますが、業者はこれも無視。
そこで市は、警察とともに、業者に対し何度も指導や停止命令を行いました。
しかしそれにも従わなかったため、今年9月、野田市は業者の共同代表2人を告発。
警察が2人を逮捕しました。
住民や野田市によると、業者は土砂搬入で約7000万円の利益を得ていましたが、条例による罰金の上限は地方自治法で定められており、業者に課された罰金はわずか80万円。
業者にとっては必要経費程度の感覚で、再犯防止にはならないのではといいます。

2021年に取材した千葉県多古町の土砂の山 その後

番組では2021年、千葉県多古町の土砂の山も取材。
高さ約20mの土砂の山が崩れ、民家の庭先まで雪崩込んだのです。
再崩落の危険性があり、住民は、別の場所で避難生活を送っていました。
それから1年半。現場を再訪すると、住民はいまだ避難生活を続けていました。
町によると強制力が弱い条例では業者が従わない可能性が高く、行政代執行の場合も巨額の費用が必要で町では負担しきれないため、事態を改善できていないといいます。

新たな法律「盛り土規制法」で抑止できるのか

盛り土の崩落が原因の熱海の土石流災害などを受け、国は2022年、「盛り土規制法」を公布。
全国一律の規制で危険な盛り土をなくし、人命を守るため、高額な罰金を課すなどを謳っています。(罰金1千万円以下、法人重課3億円以下)
しかし、規制が適用されるのは都道府県知事が指定する規制区域のみ。
さらに指定の期限もなく、今後5年以内が目標とされています。
つまり、法律が施行されてすぐに規制が強化されるわけではないのです。

土砂の山を増やさない最善の策とは

これまで土砂は「資源」という考え方のため法律による規制がありませんでした。
かつては海を埋め立てるなど大量に土砂が必要だったのです。
ところが、現在土砂は大量に余っているため行き場がなくなっています。
処分するにもお金が必要で、処分代を抑えたい企業は安く引き取ってくれる不適正な業者に処分を委託。
そのため、住宅地の横であってもお構いなしに、土砂が捨てられています。
一方、ごみは廃棄物法で規制区域をかけることなく全国一律に規制されています。
しかも捨てる際に誰が委託しどこに捨てたか明確にしなければならない義務もあります。
ならば「土砂」も「ごみ」と同様、本来の意味で全国一律で規制するべきではないでしょうか。
規制区域を設けると、それ以外の地域が狙われ土砂の山ができてしまいます。
たとえ住宅地から離れた場所であっても、熱海で土砂が長距離に渡って崩落したように、想定できない災害につながる可能性もあります。
社会の仕組みを大きく変えることはリスクも伴いますが、国は人命を守るため勇気を持ってこの問題に取り組んでほしいと思う、噂の現場でした。 

文:BS-TBS「噂の!東京マガジン」取材チーム
放送日:2022年11月20日(日)午後1:00~1:54

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