失踪した技能実習生のSOS!国の制度の盲点とは?【噂の!東京マガジン「噂の現場」】
たった一本の電話をきっかけに、外国人技能実習制度の驚くような実態が明らかになりました。
昨年11月29日、福島県で「噂の現場」の取材を終えたロケ隊が車で東京に帰る途中、ディレクターの携帯が鳴りました。
かけてきたのは失踪した外国人技能実習生を保護している東京のNPO団体「日越ともいき支援会」の吉水さん。
以前、失踪問題の取材で協力してくれた人でした。
その内容は、《関東の工場で実習中だったベトナム人女性が処遇に耐えきれず失踪、茨城まで逃げてきたが所持金が底をつき助けを求めている。すぐ迎えに行ける職員がいないので代わりに誰か保護してくれる人はいないでしょうか?》という相談でした。
このままだと野宿することになる人命にもかかわる事態ということで、ロケ隊は急遽茨城へ向かい実習生を保護しました。
保護した技能実習生の証言
そして、東京にあるシェルターに送っていく車中、なぜ失踪したのか?など話を聞くと、給料の未払いなど受け入れ先のありえない仕打ちを浮き彫りにする貴重な証言を得ることができたのです。
国は今、問題も多い「技能実習制度」を廃止し、新たに「育成就労制度(仮案)」に移行する方針ですが、その最中にも毎日のように失踪は起きていて年間9000人にのぼっています。
今回、失踪者のその後を追跡取材すると、元技能実習生たちの悲惨な現状も分かってきました。
1993年から始まった「外国人技能実習制度」は、日本で身に着けた高い技術を国に帰り広めてもらうという国際貢献の制度ですが、その実態は安い労働力の確保ということも多いのです。
今回、番組のスタッフが保護したのは若いベトナム人女性の技能実習生でした。
なぜ失踪したのか?
聞いたところ、関東某所、人里離れたプラスッチク工場に住み込みで働き、裕福ではないベトナムの実家に毎月仕送りをしていたが、給料は約束の半分で、挙句の果てに2か月間給料が未払いになるなど酷い待遇を受けたので逃げ出したと話しました。
何とかベトナム人の知人がいる茨城まで来て金を借り、2日間はホテルで過ごせたが、金が底をつき行き場を失ったといいます。
逃げ出した時にパスポートを失くしてしまったので、警察にも行き相談したそうですが、遺失届は受け付けてくれたものの、その他は何もしてくれなかったので、どうしていいものかと途方に暮れたといいます。
このままでは寒空の下、野宿するしかないと思っていたところ、SNSを通じて東京の支援団体を知り電話、番組スタッフに保護されたということでした。
実習生を取り巻く劣悪な労働環境
ベトナムから来る実習生の約8割は借金をして来日しています。
その額は平均69万円ほどで、多い人は130万円以上。
そんな彼らを低賃金とパワハラや暴力といったありえない労働環境が待っていることも多く、それが年間9000人もの失踪に繋がっている可能性が高いのです。
失踪者のその後
失踪した実習生を保護しているNPO団体の吉水さんによれば、失踪者を保護したり支援する行政機関はほぼ無いといいます。
行政機関は失踪した者が悪いという前提に立っているというのです。
では失踪者はその後どうなるのか?
運よく保護団体にたどり着けた人は、一定期間シェルターで生活、その間に日本で働けるスキルがあることを証明できる資格を取得し日本語能力検定試験にも合格できれば引き続き日本で働くことができます。
しかし、SNSをきっかけに犯罪に手を染めてしまう元実習生もいるのです。
実際ここ数年、ベトナム人による窃盗などが増えています。
実習生に寄り添う行政機関が必要
現在の外国人技能実習制度で様々な問題が起きていることから、国は去年11月、有識者会議の最終報告書案を受けて現制度を廃止し、新たに労働力の確保を目的とした育成就労制度(仮案)へ移行する方針を打ち出しました。
これまでは原則3年間転職できなかったものを、就労後1年を超えれば転職を可能にするといった内容などが報告書には記載されています。
吉水さんは、新たな制度に対して国が海外からの労働者を専門的に支援する部署をつくるなど、支援機関の強化を取り入れることが最も必要だといいます。
国は、この最終報告書を受けてどのような制度にするのか議論を続けていますが、相談機関の強化については、今のところ具体的な案はまだ明らかにされていません。
「日本に来てよかった。」実習生たちにそう言ってもらえる制度にしたいものだと思った「噂の現場」でした。
文:BS-TBS「噂の!東京マガジン」取材チーム
放送:2024年2月4日(日)午後1:00~1:54
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