ユーカリ植樹で町と住民が対立!【噂の!東京マガジン「噂の現場」】
「噂の現場」では、これまで自治体が街路樹や公園の木を伐採する計画に反対している住民たちの声を何度も取り上げてきましたが、今回は兵庫県佐用町の植樹計画に住民が反対しているという、今までに無かった現場です。
今年1月に開かれた住民説明会では、計画を進めたい町と反対する住民が激しく対立しました。
今、佐用町で何が起きているのか? 取材しました。
ユーカリ植樹計画
佐用町は所有者が手入れせず荒れた山林に悩まされています。
2009年の大雨では、そんな山林の緩い地盤が原因で土砂崩れも起きました。
そこで2年前、町は山林を買い取る制度を導入し、山の再整備を始めました。
そんな佐用町が、東京農工大学と共同でユーカリ植樹を研究している金融会社と出会い、町と民間企業、大学という3者でプロジェクトを組み、ユーカリで山林を再整備することにしたのですが、住民から「環境破壊になる」と大反対されているのです。
なぜユーカリなのか?
コアラの好物として有名なユーカリはオーストラリアなどに自生していますが、スギやヒノキに比べ成長が早いのです。
つまり短期間で山林を再整備できるというメリットを考慮し、町はユーカリを植樹することにしたといいます。
住民に知らされず進んでいた植樹計画
住民は町に対し不信感を持っています。
というのも、町が住民に何も知らせず植樹計画を進めていたからです。
住民は去年12月の新聞記事で初めて計画を知ったといいますが、その時、すでに町は7か月前から植樹を始めていたのです。
そして住民が植樹されているユーカリについて調べてみると、驚くような事実が浮かび上がってきたのです。
環境破壊になる懸念
2019年、オーストラリアで発生した大規模な山火事は、4か月間燃え続けましたが、その原因の一つが、ユーカリが多かったからだと言われているのです。
実はユーカリは欧米で「ガソリンツリー」とも呼ばれるほど、燃えやすい「テルペン」という油分のような物質を多く含んでいるのです。
またユーカリには毒素があり、コアラ以外の動物が食べると害があると言われ、根から発せられる「アレロパシー」という有害物質が別の植物の発芽や成長を阻害するといいます。
さらに、成長が早い分、地中の水分を多く吸い上げるので、山の湧き水を枯渇させてしまう可能性もあるといいます。
もしそんなことになれば、佐用町で盛んな米作りにも影響を及ぼすかもしれないと住民は懸念し、「そんな危険なユーカリの植樹はあり得ない」と反対しています。
町の担当者をインタビュー取材
ユーカリ植樹に対する住民の不安や反対を町はどう受け止めているのでしょうか?担当者に聞きました。
まず、植樹は現在実験段階で、ユーカリが佐用町で育つのか?また環境への影響などがないのか?実験中だといいます。
そして住民が心配している山火事については、プロジェクトを組んでいる東京農工大によれば日本はオーストラリアより倍近く湿度が高く雨も多いので、リスクは低いと話しました。
環境破壊への懸念については、大学と慎重に研究を進めていて何らか影響が確認された場合は本格的な植樹へは移行しないつもりだといいます。
そして、住民には何度も実験段階だということを伝えてきたとも話しました。
不信感が募った住民説明会
しかし住民は情報公開が不十分だと訴えています。
というのも、これまでに1回だけしか開かれていない住民説明会では資料が配られず、計画の内容が説明された際、情報が映し出されたモニターの撮影も禁じられたのです。
そんな町の姿勢が住民に猜疑心を抱かせているようです。
夢はバイオマス発電所
ユーカリ植樹の目的は山林の再整備だけではありませんでした。
成長が早いという利点を活かし、林業を盛り上げたいといいます。
最終的な目標は、環境に優しいということで注目を浴びている「木質バイオマス発電」を町内でやることでした。
植樹実験に成功したら、プロジェクトを組む金融企業と共同でユーカリを燃料チップにする工場を運営。
さらに発電所も建設し、発電ビジネスで町を活性化したいというのです。
しかし住民は、もともと林業従事者が少ない佐用町で林業が盛んになるとは思えないと否定的です。
ユーカリ植樹計画は町の思い通りになるのか?
「噂の現場」は今後にも注目しています。
文:BS-TBS「噂の!東京マガジン」取材チーム
放送:2024年5月5日(日)午後1:00~1:54
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