法律ができても無くならない「盛り土」【噂の!東京マガジン「噂の現場」】
今回の「噂の現場」は、危険な土砂の山「盛り土」を取り上げました。
盛り土に関しては去年5月、盛り土を作らせないようにする通称「盛土規制法」が施行されましたが、その後も福島県などでは新たに盛り土が造られているのです。
一体どういうことなのか?
取材すると、「盛土規制法」の意外な実態が見えてきました。
福島県西郷村にできた土砂の山
東京駅から東北新幹線で80分という新白河駅がある西郷村は緑豊かな村です。
ここ数年は、その生活環境の良さを気に入った移住者が増えている田舎暮らしの憧れの地ですが、去年の夏、大量の土砂が運び込まれ、危険な盛り土が造られてしまいました。
それは高さ約10メートル、長さ約90メートルという巨大な盛り土で、しかも住宅からわずか3メートルしか離れていないところにあります。
ということで住民は今、土砂崩れの恐怖を感じながら生活しています。
実際、盛り土は今にも崩れそうな感じで、周囲には崩れ落ちた岩がたくさん転がっています。
住民は警察や西郷村に何とかして欲しいと訴えたそうですが、「盛り土は私有地内のことなので何もできない。裁判しても負けるだけ」と言われたといいます。
条例が無い福島県がターゲットに
住民によれば、盛り土が造られた土地は建設関係の会社が所有している雑木林だそうです。
そこに去年7月頃から埼玉や群馬など県外ナンバーのダンプが土砂を運び込むようになり、わずか4か月半の間に巨大な盛り土を造ってしまったというのです。
その背景には、首都圏のほとんどの自治体が盛り土を規制する条例を設けたということがあるようなのです。
つまり規制する条例が市町村にも県にも無い福島県が土砂の運び先になっている可能性が高いのです。
実際、福島県では西郷村に3つ、他の町にも2つ盛り土が造られています。
急遽制定した村の条例も効力無し
住民から何とかして欲しいという訴えを受けた西郷村は、去年12月に急遽、盛り土を規制する条例を制定。
大規模な盛り土は許可制にし、危険があれば村が是正命令を出すこともできるようにしました。
もし違反すれば100万円以下の罰金も科せられますが、実は、条例の効力はすでにある盛り土に対しては無いのです。
つまり何もできないということです。
そんな現状に対し住民は「頭にくる、人の命を何だと思っているのか」と憤っていました。
盛土規制法の問題点
村の条例で対処することができないのであれば、去年5月に施行された盛土規制法を適用することはできないのか?
村長に聞くと、盛土規制法を適用するためには、まず県による規制区域の指定が必要で、現在、福島県は規制区域の指定を準備している最中だといいます。
時間がかかる規制区域の指定
準備になぜ時間がかかっているのか?
福島県を取材したところ、指定するためには地形や地質、土地の利用状況などを細かく確認する必要があり時間がかかっているということでした。
福島県は来年度中の指定完了を目指しているというので、あと1年、住民は危険に晒された生活を送るしかないのです。
今年1月に福島県は西郷村と矢祭町に関しては3月末までに規制区域を指定すると発表しましたが、まだ全国の自治体で指定を終えているのは広島県や鳥取県の一部の自治体だけ。
全国の9割の自治体がまだ指定を終えていません。
既にあった盛土にも効力がある盛土規制法
自治体による規制区域の指定が進んでいないことを国はどう捉えているのか?
取材したところ、国はサポートするなどして促しているといいます。
さらに盛土規制法は自治体の条例とは違い、すでにある盛り土に対しても危険であれば是正命令をだすことも可能で、もし従わなければ高額の罰金を科すこともできるといいます。
さらに住民の安全確保に緊急を要すれば、国が費用の半分負担し、行政代執行による強制撤去をすることもできるというのです。
どうやら今回の現場で安全確保の鍵を握っているのは福島県のようです。
住民の命が危険に晒されているという現実を直視し、迅速な対策を施して欲しいと思った「噂の現場」でした。
文:BS-TBS「噂の!東京マガジン」取材チーム
放送:2024年1月21日(日)午後1:00~1:54
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この記事の「噂の現場」は2024年1月30日(火)正午までご覧頂けます。
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