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なぜ崩れた?戦慄!住宅街で突然の土砂崩れ【噂の!東京マガジン「噂の現場」】

今年5月1日、ニュースでも話題になった、横浜市の住宅街で起きた土砂崩れの問題。
住宅の下の斜面が突然崩れ、崩れた家の所有者や周辺住民は、5月下旬の取材当時も避難生活を続けていました。
一体何が原因だったのか?
専門家と共に、詳しく探りました。

突然の崩落 8世帯19人が避難生活に

未明に起きた土砂崩れ。
崩れた土砂と擁壁ようへき は下の家を直撃。
市によると崩れた範囲は高さと幅約10m、奥行き約3mに渡り、8世帯19人が避難する事態になりました。

現地を見た専門家 「事故の原因は、大谷石の劣化と擁壁の手抜き工事」

現場は、明治初期に山を切り崩して造られた造成地で、当時からの古い擁壁が100年以上経った今も数多く残っている、打越という地区。
現地に訪れた専門家によると、この地区に見られる擁壁は、外国人居留地だった横浜で多い、ブラフ積みというフランス式の擁壁。
横長の長手という石と、奥行きがある小口という石を交互に積み上げ、小口を壁に食い込ませる形で強度を高める工法です。
ところが、崩落現場の近くのほぼ同じ擁壁を見たところ、補強となる小口がほとんど入っておらず、長手だけがほぼ垂直に積まれていた状態。
専門家は、大谷石の劣化と、手抜きのブラフ積みが重なり、擁壁が崩れた結果、土砂崩れが起きた可能性が高いといいます。
擁壁の基準を定めた法律が制定されたのは、昭和37年。
それ以前に造られた、基準を満たさない擁壁が、至る所に残されているといいます。

土砂崩れの所有者 市から家の撤去と擁壁工事を求められているが…

土砂崩れが起きた家の所有者がこの家に入居したのは40年前。
大雨の時も崩れる予兆はなく、そもそも擁壁が危険だという認識はなかったといいます。
市からは、家の撤去と擁壁工事を自力で早急に行うよう求められていますが、家は崖の上で重機が入れず解体は高額に。
擁壁工事にはさらに莫大な費用がかかるため、合計1500万円以上がかかる見込みに。
住む家がない状態で、この費用も責任を負わなければならないのです。

取材中に起きた予想外の事態

取材から9日後。
現場では、家の解体工事が始まっていました。
実は土砂崩れをニュースで知った解体業者が駆けつけ、破格の値段で解体を請け負ってくれたといいます。
予定通り、家屋の解体は、3日で完了しました。

市内の危険な崖1364カ所 待たれる工事の新技術

横浜市の調査では、市内の崖の数は9800か所。そのうち生命に危険を及ぼす可能性のある崖が1364カ所。
つまり…今回のような土砂崩れは、今後も頻繁に起こり得ます。
市は、崖を危険度ごとにランク付けしており、特に危険な崖を「Aランク」と位置付け、崖の所有者にダイレクトメールを送っているといますが、今回の事故現場には、送られていませんでした。
専門家は、今ある擁壁を壊さずに、外側から補強する技術を研究しています。
そのような技術を取り入れることも視野に入れつつ、同様の事故が起きないよう、市も市内の崖の所有者も、対策の必要性を強く認識し、早急に行動するべきではないでしょうか。

文:BS-TBS「噂の!東京マガジン」取材チーム
放送日:2022年6月5日(日)午後1:00~1:54

▽BS-TBS「噂の!東京マガジン」 毎週日曜ひる1:00~1:54 放送中です。

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