なぜ突然止まったのか?学校給食が抱える課題とは【噂の!東京マガジン「噂の現場」】
2023年9月、広島市の食堂運営会社の経営が悪化し、各地で給食の提供がストップ。
広島をはじめ、岩手・静岡・香川など13府県、64のさまざまな学校(高校や学生寮・特別支援学校など)の給食に影響が出ました。
なぜこれほど多くの学校で、給食がストップする事態が起きたのか。
当時の現場の混乱ぶりと、学校給食事業が抱える課題を取材しました。
突然給食がストップ 生徒と学校関係者が語る当時の混乱ぶり
静岡県立沼津工業高等学校。
こちらの学校には調理室があり、広島の運営会社から雇われた調理員が約30食分の給食を調理。
定時制の生徒たちは、毎日授業開始前、給食を食べていました。
ところが9月第1週、運営会社と連絡がつかなくなり給食がストップ。
生徒は弁当か自宅で食事を取ることに……。
保護者に負担がかかる事態が約1か月も続きました。
給食事業を引き継ぐ業者が1か月見つからなかった理由
県と学校による次の給食業者探しが、なぜ1か月もかかったのか。
実は給食は「学校給食法」という法律の中の「学校給食摂取基準」で、1人当たりの摂るべきカロリーや栄養素が小・中・高校ごとに細かく定められており、給食を提供する業者は、この基準を満たさなければなりません。
しかも給食費は1食あたり310円。
値上げは保護者に負担がかかるため、県は上げられず……。
そのため同じ費用で同じ質の給食を提供してくれる業者探しが難航したといいます。
民間委託の増加 業者間の競争 長期契約の弊害
給食事業は、食材費は「保護者」が、設備費・人件費・光熱費などは「各自治体」が負担しています。
また運営については、自治体がすべてを運営する「直営」と、調理業務などを外部へ委託する「民間委託」に分かれています。
専門家によると、近年、「民間委託」の割合が増えているといいます。
すると給食業者同士で入札をめぐる競争が起き、各業者は無理して安い予算で受けるようになります。
その上、給食事業の民間委託は数年にわたる長期契約が通例のため、契約期間中に人件費や食費が高騰しても、一度決まった契約を変えるのがむずかしく、業者が自腹を切らなければならない状況が起きるといいます。
その上、カロリーや栄養素の条件は、先に記した「学校給食法」で細かく決まっています。
取材したある別の給食業者によると、給食業者にとって厳しいこの状況が、今回の給食停止の問題を招いた、とのこと。
その業者によると、給食業者の約6割が「業績悪化」、3割が「赤字」だといいます。
給食事業の民間委託は、いつ、なぜ始まったのか
給食事業の民間委託は、昭和60年、当時の文部省が「学校給食業務の運営の合理化」という意図で通達したのがきっかけです。
一方で学校給食法の第五条は「国及び地方公共団体は、学校給食の普及と健全な発達を図るように努めなければならない」と国と自治体の給食事業に関する責任を定めています。
しかし静岡県教育委員会も、給食事業を直営にすることについては、「業務遂行に適した技能を有し、かつ十分な人員を適正に配置することが可能な専門業者への委託により実施していくことが、良いと考えている」と、直営については消極的な見解でした。
国が、民間委託も含めた事業全体を管轄し、持続可能な給食事業の仕組みを子どもたちを育てる学校の給食は、まさに“食のインフラ”。
それが突然止まるということは、あってはならないことです。
国は今回のことを一業者の経営の悪化ととらえず、学校給食の仕組みそのものを見直すきっかけにするべきではないでしょうか。
民間委託の増加という構造を根本的に変えるのは難しいとしても、国が給食事業の全体を管轄し、物価の変動に合わせて契約内容を見直したり、事業者を支援するなど、新たな仕組みづくりが必要ではないでしょうか。
文:BS-TBS「噂の!東京マガジン」取材チーム
放送:2023年12月24日(日)午後1:00~1:54
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