あの噂の現場は、その後どうなったのか?【噂の!東京マガジン「噂の現場」】
2022年、最後の「噂の現場」放送では、これまでに取材した現場のその後を追いました。
するとそこには、喜ぶ住民と怒りを増していた住民、それぞれの姿があったのです。
外環トンネル工事 陥没現場のその後
2年前、東京都調布市の閑静な住宅街で起きた陥没事故は今、住民への補償の段階に入っています。
地下で外環トンネルの工事を進めていた事業者は工事と陥没事故の因果関係を認め住民への補償を明言しましたが、住民の多くが不満を訴えています。
事業者は補償範囲を3つに区分けしました。
1つはトンネルの直上など緩い地盤を固める工事が必要な場所で家を建て替えることになるのでその費用が補償される区域。
またトンネルの直上から約45メートルの区域内では家屋の不具合に対し補償がされます。
この2つの区域以外は補償なしとされていますが、補償される区域からわずか数メートル外れている住民たちが事故による影響の可能性がある家屋の不具合を訴えています。
あるお宅では陥没事故後に水道管から水が漏れるようになったのです。
我々の取材に対し事業者は、個別に事情を丁寧にお伺いし誠意を持って対応させて頂きたいと答えました。
しかし、この住民が事業者に対し自宅周辺の地盤調査をお願いしたところ、何もしてくれなかったといいます。
また別の住民はリビングの椅子に座ると西に傾いているように感じたので水平器で計ってみたところ自宅が傾いてたそうです。
さらに、補償される住民からも不満の声が上がっているのです。
玄関の隙間を直してもらった住民は「直しても直しても隙間が空いてきて、家にいると頭が痛くなってくる」と体調不良を訴えています。
また補償で自宅を直した別の住民は、基礎部分に入った亀裂が広がりできた段差が日に日に大きくなっていると、陥没事故から2年経った今も被害が拡大しているということに頭を抱えていました。
この家の近くで専門家が行った調査では事業者が把握していない小さな空洞(隙間)や緩い地盤らしきものも発見されています。
そんな状態のまま事業者が地盤を固める工事やトンネル工事を始めようとしていることに住民たちは不安を感じていました。
西荻窪 道路拡幅計画のその後
30代の女性が一人暮らしをしたい街ランキング1位(当時)の、東京・西荻窪で3年前取材した道路拡幅計画のその後です。
昔ながらの商店とお洒落なカフェや雑貨店などが混在する魅力的なメイン通りを杉並区が拡幅するという計画に対し、多くの住民が街を一変させる意味のない計画だと反対していました。
そんな中、今年6月の区長選挙では拡幅を推進する当時の現職区長と計画の見直しを訴える新人候補が争ったのです。
結果はわずか186票の差で新人候補が当選。
計画に反対していた住民たちの期待は大きく膨らみました。
しかし、思うようにいっていないようです。
実は区長選挙前までに拡幅計画区間のおよそ半分で事業認可が下りており、すでに杉並区が用地買収を済ませていた場所もあったのです。
そういうこともあってか、新区長は11月に発表した街づくり基本方針(骨子案)で「既に事業認可を取得している区間では住民との合意形成を図りつつ事業を進めます」としています。
街の人たちからは「(区長が変わっても)あまり変わっていない気がする」「新しい区長になったら中止というのが、本当にできるのか」という声も聞こえてきます。
選挙公約にした「道路拡幅の見直し」とは何を意味していたのか?
噂の現場は新区長から直接話を聞くことができました。
まず見直すと言っていた選挙公約と矛盾しているのではと指摘したところ、区長は「立ち止まるというふうに言っていた。住民の方たちにきちんと丁寧に情報を届けていくというたゆまない努力、これをやっていくことが解決の道を見つけていく唯一の方法ではないかと思います。」と話し、計画については「事業認可を受けて、かつ土地を売りたいとか協力もいただいておりますし、きちんと滞りなく予定通りに行っていくということです」と話したのです。
そんな中、前区長が噂の現場の取材に応えました。
計画が中止にならないことについて前区長は「事業認可されているということから考えると計画は普通、止められないものなのです。だからそれを争点にして、さも選択肢があるかのように言動していたことについては不見識であるというしかない。」と話しました。
現区長は「今までの計画通りではないと思います。今までは住民が納得する形での関係性はなかったと思う、希薄だったと思うのです。そこですでに今まで通りではない。道路計画という中でどこまでできるのかというまさに新しい挑戦なんだと思います。」と話します。
道路計画の変更がいかに難しいかを改めて感じました。
モンスターウルフ その後のものすごい進化とは
イノシシ、シカなど野生動物による農作物被害が後を絶たない中、北海道の町工場が開発したロボット「モンスターウルフ」。
様々な音や点滅するLEDの光で、動物を撃退していましたが、2022年秋、ものすごい進化を遂げたとの情報が…。
その正体は「自走式モンスターウルフ」。
ウルフを電動の台車にのせて走らせることにより、より広い範囲の追い払いが可能になりました。
2023年4月のレンタル開始を、目指しているそうです。
放置大型バス その後の苦渋の決断とは
神奈川県川崎市の市立公園、東扇島東公園の駐車場に、1年以上放置されていた大型バス。
市は所有者に撤去を求めていましたが応じられず、5~6台分ものスペースを占領。
停められない車が迷惑していました。
その後、ふたたび現場を訪れてみると、大型バスはなく駐車場は元通りに。
実は2022年7月、所有者に代わり、川崎市が行政代執行によりバスを撤去していました。
しかし合計で100万円以上にものぼる撤去費用と駐車料金は、いまだ未納付だそうです。
勝手橋 その後の結末と住民の本音
東京・大田区で線路の向こうに渡るため、誰かが勝手にかけた橋。
取材した清水リポーターがヘルメットをぶつけてしまうほど天井が低く、各部分がさびてかなり危険な状態でしたが、これがないと180m迂回しなければならないため、重宝していた住民もいました。
その後、2022年年末に再び訪れてみると、橋自体はまだあるものの、通行は危険と判断した大田区が、入り口を封鎖していました。
区によると住民の要望もあったためだそうですが、周辺の本音を聞くと、中にはちょっと不便を感じている人もいるようでした。
日野市ゴミ収集車専用道路 市民VS市長 裁判のその後
日野市の北川原公園では、2020年から、公園内の道路を週5日、1日200台ものごみ収集車が通り問題になっていました。
危なくて子どもを公園で遊ばせられないという声が上がっていたのです。
住民は市長が造ったごみ搬入路は違法であり、市は市長に損害分を請求せよ、という裁判を起こし、東京高裁は市長が市に2億5千万を支払えという判決を出していました。
その後、2022年年末、ふたたび住民を取材すると、さまざまな変化が…。
まず最高裁で市長に対する高裁判決が確定。
しかし、住民は市長に大金を支払わせることではなく、公園内のごみ搬入路をなくすことが目的であったことから、市長との話し合いの機会を持ちました。
市長は謝罪し、今後は、ごみ収集車が通る側道を新たに造り、公園内を通らないルートを検討することで合意しました。
実はこれは、過去の番組放送時、スタジオで笑瓶さんが提案していた案でした。
この問題は、裁判をきっかけに長い時間がかかったものの、住民が望む方向に事態が改善しました。
しかし本来ならば、裁判を起こさなくても、最初から住民の意見が正しく反映されるのが、行政の望ましい形ではないでしょうか。
噂の現場では今後も気になる現場を取材し、問題提起をしていきます。
文:BS-TBS「噂の!東京マガジン」取材チーム
放送:2022年12月25日(日)午後1:00~1:54
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