監督下田彦太のドラマ「天狗の台所」第6話バックストーリー。湯気立ち昇る川の温泉シーンは、実は……。
はじめまして。
ドラマ「天狗の台所」演出部ディレクターの下田彦太と申します。
本作では第3話「かぼすと夏白菜」と、11月9日にオンエアされた第6話「ももと里芋」の演出を担当しました。
6話の見どころといえば、なんといっても川の中の温泉のシーンではないでしょうか。
色づき始めた木々に囲まれた雄大な森のなか、源泉の湧く川の温泉にゆったりと浸かり、少しずつ距離を縮めていく基とオンのふたり。
……そんなふうに見ていただけたとしたら、我々制作陣としてはありがたい限り。
しかし、実際の現場は「ゆったり」とはいきませんでした。
実は今回のロケ現場となったのは、温泉でもなんでもない真水の川!
この温泉のシーンは、原作(15話)では「先代の式子が掘り当てた温泉に東屋を立てた」という設定。
しかし、そんな雰囲気を再現できる温泉施設のロケハンは難航。
そんななか、スタッフから「川を秘湯に見立てては?」というアイデアがあがり、「その方向で行こう!」と決定しました。
しかし、問題は川の水の温度です。
撮影日は真夏だったとはいえ、撮影開始は早朝から。
山の中にはまだ涼しい風が吹いている時間帯です。
温泉に立ち込める湯けむりを大量のドライアイスで再現し、スタッフによるカメラテストが完了。
いよいよ基役・駒木根葵汰さんとオン役・越山敬達君を呼んでリハーサルです。
撮影前、「普段サウナで水風呂に入っているので余裕です!」と元気に応えてくれていた駒木根さんでしたが、常に流れる川の体感水温は予想以上に冷たかった模様。
早朝集合で眠気まなこだった越山君も一瞬で目が覚めたようです。
制作部も休憩中に二人の体を温めるテントや暖房を完備して二人をサポートしますが、体を温めるとまた川の冷たさが沁みる……。
入水するたび、「うおおおおお!」と気合を入れる二人の声が現場の山中に響き渡りました。
しかしそんな過酷な状況の中でも、本番のカメラが回ると途端に「温泉を味わう基とオン」になりきってくれる二人。
駒木根さんと越山君の俳優としてのプロ意識のおかげで、気持ちのいい秋の天然温泉の雰囲気をカメラに収めることができました。
その後に続く河原で食べるアイスのシーンでは、見ている人にもお風呂上がりのさわやかな気分が伝わる仕上がりになったのではないでしょうか。
このバックストーリーを読んで気になった方は、ぜひもう一度、6話をご覧ください。
最初に見た印象とは違う、二人の「勇姿」にお気づきいただけると思います。
さて、温泉でさらに絆が深まったかと思えたのも束の間、6話の最後では基とオンの間に哀しい溝が広がってしまいます。
果たして二人の関係はどう変化していくのか?
そして、オンの背中に現れた「アザ」の行方は?
これからも引き続き、豊かな自然の風景と美味しいごはん、そして基とオンの心の変化に注目してドラマ「天狗の台所」をお楽しみください!
書いた人:下田彦太(映像ディレクター/演出家/脚本家)
木曜ドラマ23「天狗の台所」
BS-TBS 毎週(木)よる11:00~11:30
【TVer】無料配信は放送翌日の正午から
【U-NEXT】【Lemino】【Amazonプライムビデオ】【Hulu】でも配信中
出演:駒木根葵汰 塩野瑛久 越山敬達 / 白鳥晴郎 市村優汰 村山輝星 / 浅茅陽子 本田博太郎 角田晃広(東京03)〔声の出演〕 渡辺真起子 / 原田泰造
原作:田中相『天狗の台所』(講談社「月刊アフタヌーン」連載)
主題歌:「人人」折坂悠太(ORISAKAYUTA)
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